私は朽木家に引けを取らない四大貴族の一人娘で

白哉ととても仲が良かった

だから私たちは 一緒になると思っていた

けど

違った

白哉は緋真さんを選んだ

流魂街出身の彼女を

結局、私は白哉にとって 妹のような存在だった



「…、どうかしたか?」

「いえ…」

「そうか…」



白哉は変わった


そう 緋真さん(かのじょ)を亡くしてから


昔のような柔らかい表情は 其処にはない


私の知っている白哉は もういない



「…

「はい」

「何か…あったのか?」

白哉は私の顔をジッと見つめて心配そうに尋ねた。

「いえ、特に何も変わったことは――



私が伏せ目がちに言うと、白哉は此方を向けと言わんばかりに強く私の名を呼ぶ。

「市丸に…何かされたのか?」

「滅相も御座いません。市丸隊長には色々と面倒を見て頂いております故…」

「そうか…」

「それでは、確かに書類をお届けしました。朽木隊長、私はこれで失礼致します」

「…御苦労」


隊長と唯の三席――私と彼の距離は ほど遠い


彼女と彼の距離は もっと遠かったのに――――




**




「なぁ、。ボクと一緒に追いといで」



市丸隊長の言葉が頭から離れない。

彼はどうしてあんなことを私に言ったのだろう。

私を連れていって、どうするのだというのだろう。

こんなこと誰にも言えない。

だって隊長が私のことを信頼して下さって、私を誘ってくれたのだもの。

こんな計画、誰にも――



呼ばれた方を振り返ると、そこには白哉がいた。

「朽木隊長…どうされたのですか?」

「それは…こちらの科白だ」


それは…どういう意味?


「何があったというのだ。私には申せないことか?」


…どうして?


「何も…御座いません」


どうしてなの?


「…ならばその表情は何だというのだ」


どうして私に構うの?


「何でも御座いません」


あなたは…緋真さんしか見てない


「…………」


何で緋真さんなの?



何で朽木家とあろう者が、流魂街の血を?



何で…



私じゃないの?



…」

白哉はそっと私の手を握り締めたが、私は思わずその手を振り払った。



今更優しくするのは止めて



あなたはいつだって緋真さんだけなの…



彼女がいない 今でさえも――――



「申し訳御座いません」

「いや…すまぬ」



私は…緋真さん、あなたが憎い



あなたは私から白哉を奪い



亡き今でさえ、彼を束縛する



「…邪魔をした」



待って



行かないで



「……ッ」



緋真さん 私はあなたが憎いです



けど



こう思う私は



すごく 醜い



私がもっと醜くならないためにも



白哉 私はあなたの前から消えた方がいいかもしれない



あなたも緋真さんのことも



忘れた方が いいかもしれない



「白哉っ…」



私は去ろうとする彼を引き止め、大粒の泪を流した。

それを見て、白哉は少し驚いたような顔をしていた。



お願い 白哉




あの日のように






抱きしめて




(私が白哉の懐へ飛び込むと、彼は優しく私を抱きしめてくれた)

(これで私は、行くことが出来る)





*The End*





Dear DAWN    Thanks 雨月雫 様


14:あの日のように抱きしめて   By 邑妃 姫