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真実を知るとき








「大事な話があるの」




いつになく真剣な表情で俺を呼び出した


なんとなく、嫌な予感はしてたんだ






「何だよ、話って」



「あのね・・・・・別れてほしいの」




定時も過ぎ、誰も居なくなった九番隊の執務室

しんと静まり返ったその場に、の震える声が響いた





「は?冗談だろ」



「冗談なんかで、こんなこと言わないよ」


真っ直ぐに俺を見つめるの目は真剣そのもので、鈍器で頭を殴られたような感覚がした




「何で急に・・・・・」


動揺を隠せない俺に、は悲痛な目を向ける







最近、の様子がおかしいとは思ってた

だけど、まさか別れ話になるなんて




俺達は上手くいっていた、と思う



阿散井の部下だったに俺が惚れて、告白した

と付き合い始めてからは激しかった女遊びもやめて、だけを見てきた



そんな俺にも応えてくれて、俺達2人の幸せは自他共に認められていた筈だった


そう、昨日までは―








「理由なんてないよ」



一つ一つ言葉を選びながら言うの瞳は揺れていて、泣き出しそうなのを必死に抑えているようにも見えた




「何だよそれ・・・・・。そんなの認めねぇ」



と別れたくなくて、ぼーっとする頭を必死に叩き起こす

だけど今まで去っていく女を引きとめたことのない俺は、を引き止める術がわからない





「ごめん、今まで有難う」



「ちょ、待て・・・・!」



は俺の声には耳を傾けず、くるりと背を向けて走り去ってしまった






1人残された俺は、を追いかけることも出きずにただただ呆然とするばかり


何も考えたくなくて、動く気にもなれなくて、なんだか抜け殻になっちまったみてぇだ








九番隊の俺と、六番隊の

隊舎が離れているせいで、用事でもなけりゃ滅多に会うこともない





俺達が別れたその日から、俺がを見かけることはなくなった

そして俺に気を使ってか、周りの者が俺の前での話をすることもない




これ以上ないってくらい大好きで大切だったという存在が、俺の中から消えていってしまった














と別れて暫く経ったある日、俺は久しぶりにの姿を目にした




だけどそれは俺が一番見たくなかった光景で



遠くて会話も聞こえないし、表情もよくわからないけれど

が阿散井の胸にしがみついている



なんだか裏切られたような気がして、そんなに無償に腹が立った




は、俺と別れて阿散井に乗り換えたのか


今まで未練たらしくのことを想っていた気持ちが、一気に冷めたような気がした








それから俺は、と阿散井と会わないように、2人で居るところを見ないように、六番隊舎の周辺を避けるようになった







だから

書庫で調べ物の最中に偶然阿散井が来た時は、あからさまに嫌な顔をしてしまった


阿散井は悪くないのに嫉妬してしまう自分に自己嫌悪しながらも、阿散井へと声をかける




「阿散井。お前、と付き合ってたのか」



「え?」



何言ってるんスか?と阿散井は俺に不思議そうに俺を見る





「見たんだよ。とお前が一緒に居るところ」



「あぁ・・・・・」



そう言うと、何故か寂しげ気に懐かしそうな声を出す阿散井

切な気な表情の阿散井を見て、俺はピンときた





「お前もに遊ばれてたんだろ。

 純情ぶりやがって、女って怖ぇよな」



ハッ、と鼻で笑って阿散井を見る




すると、阿散井は暗い表情で俺を睨んだ


のこと、悪く言うのやめて下さい」



「何だよ、そんな怖い顔して」




もう関係ねぇんだろ?というと、阿散井は深く息を吸い込みゆっくりと言葉を吐き出した




は・・・・・死んだんです」




一時の沈黙





「何言ってんだ、お前。訳わかんねぇ」



「先輩と別れたのは、先輩を悲しませたくなかったからなんスよ」




阿散井の言葉を理解しようと、必死に頭を回転させる



だけど、が死んだ?

そんなの信じられるわけねぇだろ





「嘘を、吐くな」



「嘘なんかじゃありません。

 が亡くなる前に堅く口止めされてたんスけど・・・・・もう無理です」




着いて来てください、と言って書庫を出た阿散井を追いかける

仕事はそこらへんの隊員に押し付けて、俺ら2人は護廷十三隊の隊舎を後にした





阿散井の背中を追って歩く間、色々なことが頭を駆け巡る




真剣な表情の阿散井

のことを良き部下と可愛がっていた阿散井が、こんな嘘を吐くはずがない






そして俺は、ようやく阿散井の言葉を理解することができた

それと同時に、目からは惜しげもなく涙が溢れてくる




連れて来られたのは、小さな墓地だった


墓石には確かに“”と刻まれており、それはがここに眠っているということを示している






阿散井の話によるとは持病を持っていたらしくて

たいしたことないから余計な心配をかけたくないと、俺に黙っていたらしい


それが急に悪化して、余命を宣告された



だから


俺が辛い思いをしないように

俺が自分の後を追わないように

俺が何の気がかりもなく幸せになれるように



は自分の想いに鍵をして、俺に別れを告げたという








初めて知った事実に、俺は愕然とした

今となっては、何にも知らなかった自分を責めることしかできない




「だからって、何で俺に相談してくれなかったんだ・・・・!」


唇をきつく噛み締めすぎて、鉄の味が口内に広がった




「先輩には、幸せになってもらいたかったんじゃないっスか?

 はそういう奴ですよ」




俺を諭すように言う阿散井の言葉が胸に染みる


改めての大切さを思い知った






だけど、もうこの世にはいない




だったら俺は、の想いを胸に生きていく


絶対にお前の分まで幸せになる




そして

が俺の幸せを願ってくれたように、俺もお前の幸せを願っているからな





真実を知るとき


俺達の想いは1つに・・・・・







to DAWN(雨月 雫さま)

素敵な企画に参加させていただき、ありがとうございました!